- 育児休業給付金の80%引き上げがいつから始まるのか
- 「手取り10割」になる仕組みと理由
- 80%給付の対象となる条件と期間の制限
- 月収別にいくらもらえるかの目安と申請方法
「育児休業給付金が80%に引き上げられる」というニュースを見て、いつから始まるのか、自分は対象になるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
実はこの「80%引き上げ」には、いくつか知っておくべき条件や期間の制限があります。内容を正しく理解しないまま育休の計画を立ててしまうと、「思っていた金額と違った」というミスマッチが起きかねません。
この記事では、80%引き上げの開始時期や手取り10割になる仕組み、対象となる条件を、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。これから育休の取得を考えている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
育児休業給付金の80%引き上げは2025年4月1日からスタート
育児休業給付金の給付率が実質80%になったのは、2025年(令和7年)4月1日からです。これは雇用保険法の改正にともなって、新しく「出生後休業支援給付金」という給付金が創設されたことによるものです。
2025年4月1日より改正雇用保険法が施行され、新たに「出生後休業支援給付金」が創設されました。(Brains-inc)
この制度改正のポイントを整理すると、次のようになります。
- 施行日は2025年(令和7年)4月1日
- 従来の育児休業給付金(67%)はそのまま維持される
- 新設された出生後休業支援給付金(13%)が上乗せされる
- 合わせて給付率80%になり、手取りでは実質10割相当になる
つまり、育児休業給付金そのものの給付率が67%から80%に上がったわけではありません。新しい給付金が13%分プラスされることで、結果として80%になるという仕組みです。
この改正の背景には、男性の育児休業取得を後押ししたいという政府の狙いがあります。
給付率を80%(手取り10割相当)まで引き上げる最大の目的は、男性の育児休業取得率の向上です。(MoneyForward)
収入が大きく減ることを心配して育休をためらう人が多かったため、この不安を和らげる制度として設計されました。
対象になるのは施行日以降に育休を始めた人
80%給付の対象となるのは、原則として2025年4月1日以降に育児休業を開始した人です。それ以前から育休に入っていた人は、従来どおり67%(181日目以降は50%)の給付率が適用されます。
対象になるかどうかを判断する基準について、厚生労働省の資料では次のように示されています。
- 育児休業給付金の支給要件を満たす方が、子の出生直後の一定期間に両親ともに育児休業を取得した場合、2025(令和7)年4月1日以後の育児休業に対して出生後休業支援給付金
出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001461102.pdf)
ここで注意したいのは、判定の基準が「出産日」そのものではないという点です。
正確な要件は「対象期間内に14日以上の育児休業を取得したか」であり、施行日(4月1日)をまたぐ場合は後述の経過措置で判定されます。(Oka-sr)
つまり、決められた対象期間の中で14日以上の育休を取ったかどうかがカギになります。自分が対象になるか不安な場合は、育休の開始日と取得日数を軸に確認していくと整理しやすくなります。
4月をまたぐ場合に知っておきたい経過措置
2025年3月から育休に入っていて、4月をまたいで休業を続けている人もいるでしょう。このようなケースでは「経過措置」という仕組みが用意されています。
経過措置の考え方を整理すると、次のとおりです。
- 4月1日より前から育休を続けている場合でも対象になる可能性がある
- その場合は「2025年4月1日」を対象期間の開始日とみなして判定する
- 4月1日以降の対象期間内に14日以上育休を取っていれば80%給付の対象になりうる
2025年4月1日より前から引き続き育児休業をしている場合でも、経過措置により「2025年4月1日」を出生後休業支援給付金の対象期間の開始日とみなして判定されます。(Oka-sr)
そのため「育休を3月に始めたから対象外」と決めつけてしまうのは早計です。2月や3月に子どもが生まれた場合でも、条件を満たせば給付を受けられるケースがあります。
自分が経過措置に当てはまるかどうかは、勤務先の人事担当者やハローワークに確認しておくと安心です。
そもそも育児休業給付金とはどんな制度?
80%引き上げの話を理解するには、まず土台となる育児休業給付金そのものを知っておく必要があります。育児休業給付金は、育休で会社から給料が出ない間の生活を支えるために、雇用保険から支払われるお金です。
この制度の基本的な位置づけは、次のように整理できます。
- 財源は雇用保険で、加入者が対象になる
- 育休中の収入減をカバーするための給付
- 原則として子どもが1歳になるまで受け取れる
- 正社員だけでなくパートやアルバイトも条件を満たせば対象になる
育児休業給付金は、雇用保険から支給される給付金です。育児休業中の収入を補填し、安心して子育てに専念できるよう設計されています。(Kayapapa)
つまり、この給付金があることで、収入がゼロになる心配をせずに育児に専念できるわけです。今回の80%引き上げは、あくまでこの既存の制度をベースにして、上乗せ分が追加されたものだと考えるとわかりやすいでしょう。
給付金がもらえる人の基本条件
育児休業給付金を受け取るには、いくつかの条件をすべて満たす必要があります。誰でも自動的にもらえるわけではないため、事前に確認しておくことが大切です。
主な支給条件は次のとおりです。
- 雇用保険の被保険者であること
- 育休開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あること
- 育休中の就業日数が月10日以下(または就業時間が80時間以下)であること
- 育休中に会社から支払われる賃金が、休業前賃金の80%未満であること
賃金支払基礎日数が11日以上あること イ 賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の月(=完全月)が12カ月以上あることという要件があり、いずれか一方を満たしていれば条件をクリアできます。(Keiyaku Watch)
転職して間もない場合や、育休前に働いていた期間が短い場合は、この条件を満たせるかどうかがポイントになります。自分の勤務実績が条件に当てはまるか不安なときは、早めに勤務先へ相談しておくとよいでしょう。
もらえる金額と支給される期間
育児休業給付金の金額は、育休に入る前の給料をもとに計算されます。給付率は育休の経過期間によって変わる点が特徴です。
支給額の計算方法と給付率は次のとおりです。
| 期間 | 計算式 |
|---|---|
| 育休開始〜180日目まで | 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67% |
| 181日目以降 | 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50% |
(1)育児休業開始から180日目まで 休業開始時賃金日額×支給日数×67% (2)育児休業開始から181日目以降 休業開始時賃金日額×支給日数×50%という段階的な仕組みになっています。(Msc-sr)
ここでいう「休業開始時賃金日額」とは、育休開始前6か月間の給料の総額を180で割った金額のことです。
支給期間は原則として子どもが1歳になるまでですが、保育所に入れないなどの理由があれば最長2歳まで延長できます。給付金は原則2か月に1度、まとめて振り込まれる形になります。
「80%」の中身は67%+13%の合わせ技
ここまで見てきたとおり、80%という数字は1つの給付金で実現しているわけではありません。従来の育児休業給付金(67%)と、新しく加わった出生後休業支援給付金(13%)を足し合わせた数字です。
2つの給付金の関係を整理すると、次のようになります。
| 給付金の種類 | 給付率 | 内容 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金 (または出生時育児休業給付金) | 67% | 従来からある基本の給付 |
| 出生後休業支援給付金 | 13% | 2025年4月新設の上乗せ分 |
| 合計 | 80% | 手取りでは実質10割相当 |
育児休業給付金(67%)又は出生時育児休業給付金(67%)に、出生後休業支援給付金(13%)が上乗せされることにより、給付率80%となります。(Msc-sr)
大切なのは、この2つがそれぞれ別の給付金だという点です。両方を受け取るには、それぞれの支給条件を満たす必要があります。
とくに上乗せ分の13%には独自の条件が設けられているため、「自動的に80%もらえる」と思い込まないよう注意が必要です。
上乗せ分を担う出生後休業支援給付金の役割
80%を実現するうえで主役となるのが、新設された出生後休業支援給付金です。この給付金は、子どもが生まれた直後の時期に、両親そろって育休を取ることを応援する目的で作られました。
出生後休業支援給付金の基本的な内容は次のとおりです。
- 支給額は休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(最大28日)× 13%
- 子の出生直後の一定期間に、両親ともに14日以上の育休を取ることが条件
- 育児休業給付と合わせて給付率80%になる
「出生後休業支援給付金」とは子の出生直後の一定期間以内に、被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付し、育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで100%相当)になる給付金です。(Msc-sr)
この制度が生まれた背景には、少子化対策として「共働き・共育て」を進めたいという狙いがあります。母親の出産直後は特にサポートが必要な時期であり、この時期に父親が育休を取りやすくすることが重視されました。
名前が似ている給付金との違いに注意
育児に関する給付金には名前の似たものが多く、混同しやすいので注意が必要です。とくに「出生後休業支援給付金」と「出生時育児休業給付金」は名前がよく似ています。
それぞれの違いを整理すると、次のようになります。
- 出生時育児休業給付金:産後パパ育休を取ったときにもらえる給付(67%)
- 出生後休業支援給付金:2025年4月新設の上乗せ給付(13%)
- 育児時短就業給付金:時短勤務で給料が減ったときに支給される別の給付
このほか、2025年4月には時短勤務者向けの給付も同時にスタートしています。
フルタイム復帰せず「時短勤務」を選択した場合でも、賃金の10%が上乗せ支給される新たな支援制度が同時に始まりました。(MoneyForward)
これらは目的も条件も異なる別々の制度です。自分がどの給付金の対象になるのかを整理しておくと、申請の際に混乱せずに済みます。
なぜ額面80%で「手取り10割」といえるのか
「80%なのに手取り10割」と聞くと、少し不思議に感じるかもしれません。これは、給付金にかかる税金や社会保険料の扱いが関係しています。
手取り10割になる理由は、大きく分けて2つの要素で成り立っています。
- 育児休業給付は非課税なので所得税がかからない
- 育休中は健康保険・厚生年金などの社会保険料が免除される
賃金の額面金額に対し、税金や社会保険料などを控除したあとの手取額が8割程度と想定すると、育児休業給付は税金や社会保険料が課されないことから、手取額の約80%が支給されることとなります。(Brains-inc)
普段の給料からは税金や社会保険料が差し引かれるため、額面と手取りには差が生まれます。一方、育休給付金にはこうした控除がないため、額面80%でも働いていたときの手取りとほぼ同じ水準になるわけです。
この仕組みは男性だけでなく、女性が育休を取った場合にも同じように当てはまります。
非課税と社会保険料免除がカギ
手取り10割を支える2つの柱を、もう少し詳しく見ていきましょう。いずれも家計への影響が大きいポイントです。
非課税と社会保険料免除について整理すると、次のようになります。
- 育児休業給付金は非課税で、所得税も住民税も課されない対象になる
- 育休中は申し出により健康保険・厚生年金の保険料が免除される
- 会社から給与が出ない場合は雇用保険料の負担もない
厚生労働省の資料でも、この点は明確に示されています。
- 育児休業中は申出により健康保険・厚生年金保険料が免除され、勤務先から給与が支給されない場合は雇用保険料の負担はありません。また、育児休業等給付は非課税です。
出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001461102.pdf)
こうした優遇が重なることで、額面以上に手取りベースでの負担感が軽くなります。働いていたときとほぼ変わらない収入を維持しながら育児に専念できるのは、大きな安心材料といえるでしょう。
住民税だけは免除されない点に注意
手取り10割という言葉から「支払いが一切なくなる」とイメージする人もいますが、これは正確ではありません。住民税については、育休中でも支払いが必要になる場合があります。
住民税の扱いで押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 給付金そのものは非課税なので、給付金に対する住民税はかからない
- ただし住民税は前年の所得に対して課される仕組み
- 前年に所得があれば、育休中もその分の住民税を支払う義務が残る
育児休業にかかわる給付金は非課税であるため、所得税や住民税はかかりません(住民税は前年の所得分を支払うものなので、前年に所得がある場合は、育休中も支払い義務があります)。(Maki-sharoushi)
つまり、育休に入る前に働いて収入を得ていた場合、その所得に対する住民税の請求は育休中にもやってきます。この支払いを見落としていると、家計の計算が狂ってしまうことがあります。
育休期間中の家計を考えるときは、住民税の支払いも忘れずに見積もっておきましょう。
80%給付を受け取るための条件
80%給付は誰でも自動的にもらえるものではなく、いくつかの条件を満たす必要があります。とくに重要なのが「両親そろって育休を取る」という点です。
80%給付を受けるための主な条件は次のとおりです。
- 本人が子の出生後8週間以内に通算14日以上の育休を取ること
- 配偶者も14日以上の育休を取ること(一定の例外あり)
- 育児休業給付金そのものの支給要件を満たしていること
父親は子の出生後8週間以内、母親は産後休業後8週間以内に、両親ともに14日以上の育児休業を取った場合、両親それぞれに、既存の育児休業給付金(休業前賃金の67%相当額)に上乗せして、出生後休業支援給付金(休業前賃金の13%相当額)が、最大28日間支給される、というイメージです。(Note)
ここで見落としがちなのが、上乗せ分は父母それぞれに支給されるという点です。夫婦がともに条件を満たせば、二人とも80%給付を受けられることになります。
「80%もらえると思っていたのに条件を満たしていなかった」とならないよう、育休の取得日数はしっかり確認しておきましょう。
夫婦それぞれが14日以上育休を取ることが原則
出生後休業支援給付金の最大の特徴は、原則として夫婦双方の育休取得が求められることです。片方だけが育休を取っても、原則としては上乗せ分を受け取れません。
原則となる条件を整理すると、次のとおりです。
- 父親は子の出生後8週間以内に通算14日以上の育休を取る
- 母親は産後休業後8週間以内に14日以上の育休を取る
- 取得する育休には産後パパ育休(出生時育児休業)も含まれる
被保険者(主に父親を想定)が子の出生日(または出生予定日)から8週間後までに「産後パパ育休」または「育児休業」を通算14日以上取得することが求められ、配偶者にも同様の育休取得が条件になります。(Maki-sharoushi)
この「14日以上」という日数は、連続していなくても通算で計算されます。そのため、分割して取得した場合でも合計で14日に達していれば要件を満たせます。
夫婦で育休のスケジュールを話し合うときは、この14日ラインを意識して計画を立てるとよいでしょう。
ひとり親や配偶者が専業主婦(夫)の場合の特例
「夫婦そろって育休」が原則とはいえ、そもそも配偶者が育休を取れない家庭もあります。こうしたケースでは、本人だけの育休取得で給付を受けられる特例が設けられています。
配偶者の育休を要件としない主なケースは次のとおりです。
- 配偶者がいない(ひとり親)
- 配偶者が専業主婦(夫)などの無業者
- 配偶者が自営業者やフリーランス
- 配偶者が産後休業中
原則として、本人の育休取得だけでなく配偶者の育休取得も必要ですが、例外として「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当していれば、本人のみの育休取得で給付金を受け取ることができます。(Note)
たとえば父親が育休を取る場合、母親が専業主婦や産後休業中であれば、自動的にこの特例に当てはまります。そのため、配偶者が働いていない家庭でも、条件を満たせば80%給付を受けられます。
自分の家庭が特例に該当するかどうかは、配偶者の就業状況をもとに確認してみてください。
80%になるのは最大28日間だけという落とし穴
ここまで読んで「育休中はずっと80%もらえる」と思った方は、少し立ち止まってください。80%給付が受けられるのは、あくまで最大28日間に限られます。
期間に関する重要なポイントは次のとおりです。
- 80%(上乗せ13%)が適用されるのは最大28日間
- 28日を過ぎると従来の給付率に戻る
- この28日は子の出生後8週間以内の育休が対象
出生後休業支援給付金が上乗せされることで、28日間は「出生時育児休業給付金」と「育児休業給付金」は賃金額面の80%が支給されることになります。(Maki-sharoushi)
つまり、80%という手厚い給付はあくまで育休の最初の一時期だけです。その後は通常の給付率に切り替わっていきます。
この期間制限を知らないまま長期の育休計画を立てると、想定より収入が少なくなる可能性があります。育休全体の収入を見積もるときは、80%が続く期間と、その後の期間を分けて考えることが大切です。
29日目以降は67%、181日目以降は50%へ
80%給付が終わったあとの給付率も、あらかじめ知っておきましょう。給付率は育休の経過とともに段階的に下がっていきます。
期間ごとの給付率をまとめると、次のようになります。
| 期間 | 給付率 |
|---|---|
| 最大28日間(上乗せ対象期間) | 80% |
| 29日目〜180日目 | 67% |
| 181日目以降 | 50% |
育児休業開始から180日目まで 休業開始時賃金日額×支給日数×67% 育児休業開始から181日目以降 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%という基本の仕組みに、最初の28日間だけ13%が上乗せされるイメージです。(Book-taishoku)
このように、育休が長くなるほど給付率は下がっていきます。これは長期化する育休からの職場復帰を促す狙いがあるためです。家計への影響が大きいポイントなので、時期ごとの給付率の変化はしっかり押さえておきましょう。
出生後8週間以内の取得がポイント
80%給付を確実に受け取るには、育休を取る「タイミング」も重要になります。上乗せ分の対象となるのは、子どもが生まれた直後の期間だからです。
タイミングに関する押さえどころは次のとおりです。
- 父親は子の出生後8週間以内が対象期間
- 母親は産後休業後8週間以内が対象期間
- この期間内に14日以上取得することが条件
母親の出産直後の8週間は、周囲のサポートが特に必要な時期です。この時期に父親が育児休業(産後パパ育休も含みます)を取った場合、手厚い給付が受けられるようになります。(Note)
つまり、出産からしばらく経ってから育休を取り始めても、この時期を過ぎていると上乗せ分の対象外になってしまいます。制度が想定しているのは、あくまで出産直後の集中的なサポートです。
80%給付を狙うなら、出産のタイミングに合わせて早めに育休を取る計画を立てておくことが欠かせません。
育児休業給付金の80%引き上げでいくらもらえる?
制度の仕組みがわかったところで、実際にいくらもらえるのか気になりますよね。ここでは、月収別のケースで具体的な金額を見ていきましょう。
計算の基本式は次のとおりです。
- 休業開始時賃金日額 = 育休開始前6か月間の総支給額 ÷ 180
- 給付額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
賃金日額 = 育休開始前6ヶ月間の総支給額 ÷ 180日という形で、まず1日あたりの賃金を求めます。(Kayapapa)
ここで注意したいのは、賞与(ボーナス)はこの計算に含まれないという点です。含まれるのは残業代や通勤手当などで、賞与や臨時の手当は除外されます。
以下では、この計算式を使って月収別の金額を試算してみます。
月収20万円のケースで試算
まずは月収20万円の場合を見てみましょう。この収入水準では、上限額に達しないため、給付率がそのまま反映されます。
月収20万円(賃金日額約6,667円)の場合の目安は次のとおりです。
| 期間 | 計算 | 目安 |
|---|---|---|
| 80%期間(最大28日) | 約6,667円 × 28日 × 80% | 約14万9,300円 |
| 67%期間(月30日換算) | 約6,667円 × 30日 × 67% | 約13万4,000円 |
| 50%期間(月30日換算) | 約6,667円 × 30日 × 50% | 約10万円 |
このように、最初の28日間は月13万4,000円ではなく約14万9,000円と、上乗せ分の効果がはっきり出ます。さらに社会保険料の免除と非課税の効果を考えると、手取りベースでは働いていたときとほぼ変わらない水準になります。
月収がこのくらいの方は、上限を気にせず給付率どおりの金額を受け取れると考えてよいでしょう。
月収30万円・40万円のケースと上限額
続いて、月収30万円と40万円のケースを見ていきます。高めの収入になると「上限額」の存在が関わってきます。
まず月収30万円(賃金日額1万円)の場合の目安は次のとおりです。
| 期間 | 計算 | 目安 |
|---|---|---|
| 80%期間(最大28日) | 1万円 × 28日 × 80% | 22万4,000円 |
| 67%期間(月30日換算) | 1万円 × 30日 × 67% | 20万1,000円 |
| 50%期間(月30日換算) | 1万円 × 30日 × 50% | 15万円 |
計算例として、月収30万円の会社員Aさん(男性)が2026年6月1日から育児休業を開始した場合、6か月間の賃金総額180万円÷180=休業開始時賃金日額1万円となり、育休開始180日間の月額(30日分換算)は20万1,000円(67%)、181日目以降は15万円(50%)となります。(Hojyokin Portal)
一方、月収が高い人には賃金日額の上限が設定されています。
休業開始時賃金日額の上限額は16,110円、下限額は3,014円です(令和8年7月31日までの額)。(Hojyokin Portal)
この上限は毎年8月1日に改定されるため、最新の数値は厚生労働省の資料で確認する必要があります。
月収が高い方の目安として、次の点を押さえておきましょう。
- 賃金日額が上限(1万6,110円)を超えると、上限額で頭打ちになる
- 休業前の賃金が目安として月47万円以上だと、上限により、手取り10割とならないこともあります
- 多くの人は上限に達しないため、手取りはほぼ減らない
出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001461102.pdf)/Note
月収40万円程度であれば上限内に収まるケースが多いですが、47万円を超えるような高収入の方は上限の影響を受ける可能性があります。自分の場合の正確な金額を知りたいときは、賃金日額を計算したうえで上限と照らし合わせてみてください。
育児休業給付金の申請方法と必要書類
給付金は自分で直接ハローワークに行って申請するわけではありません。原則として、会社を通じて手続きを進める形になります。
申請の全体像を整理すると、次のとおりです。
- 育休開始予定日の1か月前までに勤務先へ申し出る
- 会社がハローワークに書類を提出する
- 審査を経て、指定口座に給付金が振り込まれる
育児休業給付金は原則として、会社が2カ月に1度の頻度でハローワークに支給申請を行い、育休中の従業員に2カ月分がまとめて支払われます。(Manekomi)
このように、実際の申請作業の多くは会社が担ってくれます。ただし、本人が用意すべき書類や確認すべき事項もあるため、任せきりにするのは禁物です。
初回の振り込みは育休開始から2〜3か月後になるのが一般的なので、その間の家計にも余裕を持たせておくと安心です。
会社を通してハローワークへ申請する流れ
申請の流れを、時系列に沿って確認しておきましょう。自分がどのタイミングで何をすればよいかがわかると、スムーズに手続きを進められます。
大まかな流れは次のとおりです。
- 育休取得の意思を勤務先に伝える(開始1か月前まで)
- 会社から渡される申請書に必要事項を記入する
- 母子健康手帳の写しなど、本人が用意する書類を提出する
- 会社が賃金台帳などを添えてハローワークへ申請する
- 審査後、給付金が振り込まれる
会社がハローワークを通じて申請手続きを行います。申請のための書類は、基本的に事業主が用意しますが、必要に応じて証明書類の提出を求められることがあります。(Book-taishoku)
このように、賃金証明などの書類は会社側が準備してくれます。一方で、出産を証明する書類などは本人が用意する必要があります。
不明な点があれば、早い段階で人事担当者に確認しておくと手続きが滞りません。
準備しておく書類と申請の期限
申請をスムーズに進めるために、必要な書類を早めにそろえておきましょう。書類に不備があると、給付が遅れる原因になります。
主な必要書類は次のとおりです。
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 賃金台帳や出勤簿など、賃金・休業を証明する書類
- 母子健康手帳など、出産の事実を確認できる書類(写し可)
育児の事実、出産予定日および出生日を確認することができるもの(写し可)(例)母子健康手帳(出生届出済証明のページと分娩予定日が記載されたページ)、医師の診断書(分娩(出産)予定日証明書)などが本人側で用意する代表的な書類です。(Keiyaku Watch)
初回の申請には期限がある点にも注意が必要です。
初回の支給申請は、育休開始日から4か月以内に行う必要があります。期限を過ぎると受給できなくなる恐れがあるため、育休に入ったら早めに手続きを進めましょう。
育児休業給付金の80%引き上げに関するよくある疑問
最後に、80%引き上げについて多くの人が疑問に感じるポイントをQ&A形式で整理します。制度が複雑なぶん、細かい部分で迷いやすいものです。
ここでは、とくに質問の多い3つの疑問を取り上げます。
- 出産が3月でも80%給付の対象になるのか
- 賞与(ボーナス)も補償の対象になるのか
- 育休中に少し働いても給付金はもらえるのか
いずれも家計に関わる大切なポイントばかりです。自分の状況に近いものがあれば、参考にしてみてください。
出産が3月でも対象になる?
「制度開始が4月だから、3月生まれは対象外なのでは」と心配する方は少なくありません。しかし、これは必ずしも正しくありません。
3月出産のケースで押さえておきたい点は次のとおりです。
- 4月1日をまたぐ場合は経過措置で判定される
- 対象期間が4月1日以降にかかっていれば対象になりうる
- その期間内に14日以上育休を取っていることが条件
2月・3月生まれであっても、対象期間(父親は子の出生後8週間、母親は産後休業後8週間=出生後16週間)が4月1日以降にかかり、かつ4月1日以降の対象期間内に14日以上の育休を取得していれば、80%給付の対象となる場合があります。(Oka-sr)
つまり、出産月が3月というだけで諦める必要はありません。育休の取得時期が4月以降にかかっていれば、給付を受けられる可能性が十分にあります。
自分のケースが対象になるか判断が難しいときは、ハローワークに確認するのが確実です。
賞与(ボーナス)も補償される?
「給付金の計算にボーナスも入るのか」という疑問もよく聞かれます。結論からいうと、賞与は給付金の計算には含まれません。
賞与の扱いについて整理すると、次のとおりです。
- 給付額の計算のもとになる賃金に賞与は含まれない
- 含まれるのは月々の給料や残業代、通勤手当など
- 臨時に支払われる手当も計算から除外される
賞与(ボーナス)は計算に含まれないため、育休給付金はあくまで毎月の給料をベースに算出されます。(Hojyokin Portal)
そのため、ボーナスの割合が高い働き方をしている人は、年収から想像する金額よりも給付額が少なく感じられることがあります。給付額を試算するときは、賞与を除いた月給ベースで考えるようにしましょう。
育休中に少しだけ働いても給付金はもらえる?
育休中でも、状況によっては少し働きたいというケースもあるでしょう。一定の範囲内であれば、働きながら給付金を受け取ることも可能です。
育休中の就労について押さえておきたい条件は次のとおりです。
- 就業日数が月10日以下(超える場合は就業時間80時間以下)であること
- 育休中の賃金が休業前賃金の80%未満であること
- これらを超えるとその期間の給付は受けられなくなる
育児休業開始日から起算した1カ月ごとの期間に、「働いた日数が10日以下(10日を超える際は80時間以下)」であること、育児休業中に支払われる1カ月の賃金が、休業前の賃金の80%未満であることが支給の条件になります。(Joyobank)
つまり、働きすぎたり賃金を受け取りすぎたりすると、給付金が減額されたり支給されなくなったりします。副業を考えている場合も、この基準を超えないよう注意が必要です。
育休中に働く予定がある人は、就業日数と賃金の両方に気を配りながら調整していきましょう。
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