懲戒解雇されてしまうと、失業保険はもらえないと思い込んでいる人は少なくありません。しかし実際には、懲戒解雇であっても失業保険を受け取れるケースがほとんどです。大切なのは、あなたのケースが「重責解雇」に当たるかどうかという一点です。ここが受給できる時期や金額を左右する分かれ目になります。この記事では、受給できるのかどうか、いつから、いくらもらえるのかを、初めての人にもわかるように順を追って解説します。
- 懲戒解雇でも失業保険は受け取れること
- 受給の可否・時期・金額を左右する「重責解雇」の判断基準
- いつから・いくら・どのくらいの期間もらえるのか
- 申請手続きの流れと、失業保険以外に受け取れるお金
懲戒解雇でも失業保険は受け取れる|カギは「重責解雇」かどうか
懲戒解雇を受けても、失業保険そのものを完全に失うわけではありません。問題になるのは、その懲戒解雇が雇用保険上の「重責解雇」に当たるかどうかです。同じ懲戒解雇でも、重責解雇に該当するかどうかで受給できる時期や金額が大きく変わります。判断のポイントを整理すると次のようになります。
- 重責解雇に当たる場合は、自己都合退職に近い扱いになり、受給が遅れやすい
- 重責解雇に当たらない場合は、会社都合退職に近い扱いになり、比較的早く受け取れる
- どちらに該当するかはハローワークが個別に判断する
つまり懲戒解雇という言葉だけで受給の可否は決まりません。まずは自分がどちらの扱いになりそうかを見極めることが第一歩になります。
「懲戒解雇=もらえない」は誤解
懲戒解雇されると失業保険が一切もらえないというのは、よくある思い込みです。懲戒解雇は会社が定める就業規則に基づく処分であり、雇用保険の受給資格を直接奪うものではありません。弁護士による解説でも、懲戒解雇であっても失業保険を受給できると明確に説明されています。
懲戒解雇だと失業保険の受給につき、自己都合退職として、不利益に扱われてしまうことがあります。しかし、懲戒解雇の場合に常に自己都合退職とされてしまうわけではありません。
引用元:リーガレット「懲戒解雇でも失業保険はもらえる!いつから・いくらの金額かを解説」(https://legalet.net/disciplinary-dismissal-unemployment-insurance/)
このように、懲戒解雇であっても給付を受けられる可能性は十分にあります。受給を諦めてしまう前に、自分のケースがどう扱われるのかを確認しておきましょう。
懲戒解雇と重責解雇は別物という考え方
懲戒解雇と重責解雇は、似ているようで性質の違う言葉です。懲戒解雇は会社の就業規則に基づく懲戒処分の一種で、労働法の世界の言葉です。一方で重責解雇は雇用保険の世界で使われる言葉で、失業保険の扱いを決めるための区分です。両者の違いを整理すると次のようになります。
- 懲戒解雇は、会社が社員の問題行為を理由に一方的に雇用契約を終わらせる処分
- 重責解雇は、労働者本人の重大な責任による解雇として、失業保険上で不利に扱われる区分
- 会社が懲戒解雇と判断しても、ハローワークが必ず重責解雇と認めるとは限らない
会社の処分名と、ハローワークの給付判断は別々に決まります。だからこそ、懲戒解雇イコール重責解雇と早合点しないことが重要です。
重責解雇に当たるかどうかで待遇が大きく変わる
重責解雇に該当するかどうかで、失業保険の受け取り方は大きく変わります。重責解雇と判断されると、給付が始まるまで長く待たされたり、受け取れる日数が少なくなったりします。逆に該当しなければ、会社都合退職に近い有利な条件で受給できます。違いを表で見比べてみましょう。
| 項目 | 重責解雇に当たる場合 | 重責解雇に当たらない場合 |
|---|---|---|
| 扱い | 自己都合退職に近い | 会社都合退職(特定受給資格者)に近い |
| 受給開始 | 待期に加えて給付制限があり遅い | 給付制限がなく早い |
| もらえる日数 | 少なくなりやすい | 手厚くなりやすい |
同じ「懲戒解雇された」という状況でも、結論はここまで変わります。自分がどちらに当てはまりそうかを、この後のケース解説で確認していきましょう。
そもそも失業保険(雇用保険の基本手当)とはどんな制度か
失業保険とは、正式には雇用保険の「基本手当」と呼ばれる給付のことです。仕事を失った人が生活の心配をせずに次の仕事を探せるよう、一定期間お金を支給する制度です。懲戒解雇の話に入る前に、まずこの制度の基本を押さえておきましょう。制度の骨格は次のようになっています。
- 会社を離職した人が、再就職までの生活を支えるための給付
- 財源は労働者と会社が支払う雇用保険料
- 受け取るにはハローワークで求職の申し込みをする必要がある
つまり失業保険は、ただ会社を辞めればもらえるお金ではありません。働く意思を持って求職活動をする人を支える制度だという点を理解しておくことが大切です。
失業保険の役割と対象になる人
失業保険は、離職した人が安心して再就職活動に取り組めるようにするための給付です。厚生労働省も、失業中の生活を心配せずに再就職活動ができるよう支給するものだと説明しています。対象になるのは、原則として雇用保険に加入して働いていた人です。具体的には次のような人が受給の対象になります。
- 雇用保険の被保険者として一定期間働いていた人
- 離職して現在は職に就いていない人
- 働く意思と能力があり、実際に求職活動をしている人
雇用保険に加入していれば、正社員だけでなくパートや契約社員も対象になり得ます。まずは自分が雇用保険の被保険者だったかどうかを確認しておきましょう。
受給に必要な「失業の状態」の意味
失業保険を受け取るには、単に会社を辞めただけでは足りません。制度が求めているのは「失業の状態」にあることです。この失業の状態には、はっきりとした意味があります。次の3つをすべて満たしている必要があります。
- 積極的に就職しようとする意思があること
- いつでも就職できる能力(健康状態や環境)があること
- 求職活動をしているのに職に就けない状態であること
たとえばすぐに働けない事情がある場合は、失業の状態とは認められません。懲戒解雇であってもこの条件は共通なので、受給を目指すなら求職活動が前提になると覚えておきましょう。
懲戒解雇が重責解雇と判断される主なケース
重責解雇に当たるかどうかは、あなたの離職理由がどれだけ悪質かで決まります。ハローワークは厚生労働省の「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」に沿って個別に判断します。弁護士の解説によれば、重責解雇に該当するのはおおむね次の7つのケースに限られます。
- 刑法などに違反する行為をして処罰を受けた場合
- 法律違反の行為をして事業所に重大な損害を与えた場合
- 故意または重大な過失により会社の設備や器具などを壊した場合
- 会社の信用を著しく傷つけたり損害を与えたりした場合
- 就業規則に違反して長期間にわたり無断欠勤し、出勤の督促にも応じない場合
- 正当な理由なく懲戒解雇された場合など、就業規則上の重大な違反があった場合
- 経歴詐称やその他これらに準ずる重大な理由がある場合
これらは、いずれも労働者側に重い責任があると評価される行為です。自分の理由がここに当てはまるかどうかが、重責解雇判定の分かれ目になります。
犯罪行為や法令違反で処罰を受けた場合
刑法などの法律に違反し、実際に処罰を受けた場合は重責解雇と判断されやすくなります。たとえば会社のお金を着服する横領は、その典型例です。弁護士の解説でも、横領による懲戒解雇について次のように説明されています。
横領による懲戒解雇については、ケース1の刑法に違反して処罰を受けたケース又はケース3の故意により損害を与えたケースとして、重責解雇となる可能性が高いでしょう。
引用元:リーガレット「懲戒解雇でも失業保険はもらえる!いつから・いくらの金額かを解説」(https://legalet.net/disciplinary-dismissal-unemployment-insurance/)
このように、犯罪行為が絡むケースは重責解雇と認定される可能性が高いといえます。ただし失業保険自体はもらえるため、受給を諦める必要はありません。
会社の設備・器具を故意や重過失で壊した場合
会社の設備や機械、備品などを壊した場合も、重責解雇に当たることがあります。ただし、うっかりした軽いミスまで対象になるわけではありません。問題になるのは、わざと壊した場合や、著しく不注意だった場合です。判断の目安は次のように整理できます。
- 故意に会社の設備や器具を壊した場合は重責解雇に当たりやすい
- 重大な過失(著しい不注意)で壊した場合も対象になり得る
- 通常の業務で起こり得る軽微なミスは、重責解雇とは判断されにくい
同じ「壊した」でも、故意かどうか、過失の重さがどれくらいかで結論が変わります。自分のケースがどの程度の落ち度だったのかを冷静に振り返ってみることが大切です。
会社の信用を傷つけ損害を与えた場合
会社の信用を著しく傷つけ、損害を与えた場合も重責解雇の対象になります。会社の看板や信頼は、事業を続けるうえでとても重要な財産だからです。どのような行為が問題になるのか、具体例を挙げてみましょう。
- 取引先に対して不正な行為を行い、会社の評判を落とした
- 会社の名前を使って私的な利益を得ようとした
- SNSなどで会社の機密や不祥事を流し、信用を大きく損なった
これらは、単なる社内のルール違反にとどまらず、会社の外部にまで損害を広げる行為です。影響の大きさから、重責解雇と判断されやすい類型といえます。
就業規則への重大な違反(横領・長期無断欠勤など)
就業規則に対する重大な違反も、重責解雇の代表的な理由です。就業規則は職場の基本的なルールであり、これを大きく破る行為は重く見られます。特に問題になりやすいのは次のようなケースです。
- 会社のお金や物を横領した
- 正当な理由なく長期間、無断で欠勤を続けた
- 出勤を促されても応じず、連絡も取れない状態が続いた
こうした行為は、会社との信頼関係を根本から壊すものとされます。ただし、この場合でも失業保険自体は受給できるので、まずは手続きを進めることが大切です。
機密情報の漏えい・会社名を使った不正・経歴詐称
情報の漏えいや会社名を悪用した不正、経歴詐称も重責解雇に含まれます。これらは会社の信用や利益を直接損なう行為として重く扱われます。それぞれの内容を確認しておきましょう。
- 顧客情報や営業秘密などの機密情報を外部に漏らした
- 会社の名前を使って、無断で取引や契約を行い利益を得た
- 学歴や職歴を偽って入社する経歴詐称をしていた
経歴詐称については、後から発覚した場合にそれ自体が解雇理由になることもあります。いずれのケースも、労働者側の責任が重いと判断されやすい点を押さえておきましょう。
重責解雇に当てはまらない懲戒解雇はどう扱われるのか
懲戒解雇のすべてが重責解雇になるわけではありません。先ほどの7つのケースに当てはまらない懲戒解雇は、より有利な扱いを受けられる可能性があります。どのような扱いになるのか、ポイントを整理してみましょう。
- 重責解雇に当たらなければ、会社都合退職に近い扱いになり得る
- その場合、給付制限がなく早めに受給を開始できる
- 判断に納得できないときは、ハローワークに確認や異議を申し立てられる
つまり、懲戒解雇されても内容次第では手厚い給付を受けられる場合があります。自分のケースが重責解雇に当たらないなら、その扱いを受けられるよう確認することが大切です。
会社都合退職(特定受給資格者)に近い扱いになる理由
重責解雇に当たらない懲戒解雇は、会社都合退職に近い扱いになることがあります。これは、労働者本人に重大な責任があるとまでは言えないと判断されるためです。会社都合退職に近い扱い、いわゆる特定受給資格者になると受給条件が緩和されます。特定受給資格者について、厚生労働省の参考資料をもとにした解説では次のように説明されています。
特定受給資格者とは、「倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされた者」のことをいいます。
引用元:アディーレ法律事務所「特定受給資格者と特定理由離職者の違いは?失業手当との関係はある?」(https://nara.adire.jp/column/796/)
この扱いになると、給付制限がなく、もらえる日数も手厚くなります。自分が重責解雇に当たらないと考えるなら、この点をしっかり確認しておきましょう。
判断に納得できないときはハローワークへ確認・異議申し立て
重責解雇と判断されたことに納得できない場合は、そのまま受け入れる必要はありません。最終的な離職理由の判断は、会社ではなくハローワークが行うからです。会社が離職票に重責解雇と記載していても、あなたの言い分を聞いてもらえます。異議を伝えるときは次の準備をしておくとよいでしょう。
- 離職票に記載された離職理由をよく確認する
- 実際の状況を説明できる資料(メールや書類など)を用意する
- ハローワークの窓口で事情を説明し、判断の見直しを求める
弁護士の解説でも、7つのケースに当たらないのに重責解雇とされている場合は、ハローワークに異議を述べるべきだと説明されています。おかしいと感じたら、まず窓口で相談することが第一歩です。
懲戒解雇で失業保険をもらうための条件を状況別に整理
失業保険を受け取るには、雇用保険にどれくらい加入していたかという条件を満たす必要があります。そして、この必要な加入期間は重責解雇かどうかで変わってきます。状況別に整理すると次のようになります。
| 区分 | 必要な加入期間 |
|---|---|
| 重責解雇に当たる場合 (自己都合に近い扱い) | 離職前2年間に通算12か月以上 |
| 重責解雇に当たらない場合 (会社都合に近い扱い) | 離職前1年間に通算6か月以上 |
このように、重責解雇に当たらない方が条件は緩やかになります。自分がどちらに該当するかを踏まえて、加入期間を満たしているか確認しましょう。
重責解雇の場合に必要な加入期間(2年で12か月以上)
重責解雇に当たる場合、失業保険の受給条件は自己都合退職と同じになります。つまり、離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上必要です。この条件を満たさなければ、原則として受給資格は得られません。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 対象となる期間は、離職日からさかのぼって2年間
- その中で、賃金の支払い基礎となる日数が一定以上ある月を12か月分カウントする
- 途中で転職している場合も、条件を満たせば前職の期間を通算できることがある
重責解雇でも、この条件をクリアしていれば失業保険を受け取れます。まずは自分の加入期間が12か月に届いているかを確認しましょう。
重責解雇に当たらない場合の加入期間(1年で6か月以上)
重責解雇に当たらない懲戒解雇は、会社都合退職に近い扱いになります。この場合、受給に必要な加入期間は大きく緩和されます。特定受給資格者などについては、厚生労働省の参考資料をもとにした解説で次のように説明されています。
失業手当の給付を受けるためには、特定受給資格者、特定理由離職者については、離職の日以前1年間に6ヶ月以上の被保険者期間があることが必要です。
引用元:アディーレ法律事務所「特定受給資格者と特定理由離職者の違いは?失業手当との関係はある?」(https://nara.adire.jp/column/796/)
この扱いになれば、勤続期間が短くても受給できる可能性が高まります。自分が重責解雇に当たらないと考えるなら、この緩和された条件を確認しておきましょう。
共通して求められる「働く意思」と求職活動
加入期間の条件を満たしても、それだけで自動的に給付されるわけではありません。重責解雇かどうかにかかわらず、共通して求められる条件があります。それが「働く意思」と実際の「求職活動」です。具体的には次のことが求められます。
- 積極的に就職しようとする意思があること
- 健康状態や環境の面で、いつでも就職できる状態にあること
- ハローワークで求職を申し込み、実際に求職活動を行うこと
つまり、給付を受けている間は再就職に向けて動き続ける必要があります。懲戒解雇であっても、この前提は変わらないことを覚えておきましょう。
懲戒解雇後の失業保険はいつからもらえるのか
失業保険を申請しても、すぐに振り込まれるわけではありません。まず全員に共通する待期期間があり、さらに重責解雇の場合は給付制限が加わります。受給開始までの流れを整理すると次のようになります。
- すべての人に共通して、7日間の待期期間がある
- 重責解雇に当たる場合は、そのあとに給付制限がついて受給が遅れる
- 重責解雇に当たらない場合は、給付制限がなく比較的早く受け取れる
このように、いつからもらえるかも重責解雇かどうかで変わります。自分のケースで受給開始がいつごろになるのか、順番に見ていきましょう。
すべての人に共通する7日間の待期期間
失業保険には、離職理由にかかわらず全員に適用される待期期間があります。これはハローワークで求職を申し込んだ日から数えて7日間です。この期間について、退職支援メディアでは次のように説明されています。
失業保険の給付を受ける際には、自己都合退職や会社都合退職にかかわらず、7日間の待機期間が設けられています。
引用元:退職バンク マガジン「懲戒解雇されても失業保険はもらえるのか?条件や金額・対処法を解説」(https://taisyoku-madoguchi.jp/media/fire-shitugyo/)
この7日間は誰でも支給の対象になりません。まずはこの待期期間を過ぎることが、受給の出発点になります。
重責解雇に当たる場合は給付制限で受給が遅れる
重責解雇に当たる場合は、7日間の待期期間のあとにさらに給付制限がつきます。給付制限とは、その期間中は手当が支給されない待ち時間のことです。群馬労働局の案内によると、給付制限の期間は次のように定められています。
自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇(重責解雇)された場合、給付制限は3か月となります。
引用元:群馬労働局・ハローワーク「給付制限期間が原則1か月となります」(https://jsite.mhlw.go.jp/gunma-roudoukyoku/content/contents/002182062.pdf)
2025年4月から一般の自己都合退職の給付制限は原則1か月に短縮されました。しかし重責解雇の場合は3か月のまま据え置かれているため、受給がかなり遅れる点に注意が必要です。
重責解雇に当たらない場合は比較的早く受け取れる
重責解雇に当たらない懲戒解雇は、会社都合退職に近い扱いになります。この場合、自己都合退職のような給付制限は課されません。そのため受給開始までの流れはシンプルです。おおまかな流れは次のようになります。
- ハローワークで求職の申し込みをする
- 7日間の待期期間を過ごす
- 待期期間が終われば、給付制限なしで支給の対象になる
給付制限がない分、重責解雇のケースよりも早くお金を受け取れます。自分が重責解雇に当たらないなら、この早い受給を目指して手続きを進めましょう。
初回振込までのおおよその目安
実際に最初の振り込みがあるまでには、待期や認定を経て一定の時間がかかります。失業保険は認定日ごとにまとめて支給される仕組みだからです。弁護士の解説によれば、支給のサイクルは次のように説明されています。
失業保険は、1ヶ月分の支給が28日分ずつ行われます。初回の給付については、待期期間の関係で、28日分未満になる可能性が高いです。
引用元:企業経営者のための法律相談サイト「懲戒解雇と失業保険」(https://www.datadeta.co.jp/column/懲戒解雇と失業保険|懲戒解雇の条件や懲戒解雇/)
給付制限のない人は、待期後の初回認定を経ておおむね1か月前後で最初の振り込みが期待できます。一方、重責解雇で3か月の給付制限がつく人は、初回振込までさらに時間がかかると考えておきましょう。
懲戒解雇の場合に失業保険はいくら・どのくらいの期間もらえるか
失業保険でもらえる総額は、1日あたりの金額と、もらえる日数のかけ算で決まります。懲戒解雇の場合、特に重責解雇だと日数が少なくなり、総額も抑えられやすくなります。金額を左右する要素を整理すると次のとおりです。
- 1日あたりの金額である「基本手当日額」
- 年齢によって決まる基本手当日額の上限と下限
- もらえる日数である「所定給付日数」
この3つが分かれば、おおよその受給総額をイメージできます。それぞれの決まり方を順番に見ていきましょう。
1日あたりの金額(基本手当日額)の計算方法
1日あたりに受け取れる金額を、基本手当日額といいます。これは離職前の給料をもとに計算されます。基本的な計算の流れは次のとおりです。
- 賃金日額を求める。離職前6か月の賃金合計(賞与を除く)を180で割る
- 基本手当日額を求める。賃金日額に給付率(原則50〜80%)をかける
- 給付率は賃金が低い人ほど高くなる仕組み
たとえば給料が低かった人ほど、給付率が高く設定され、手厚く支えられます。まずは自分の賃金日額を計算し、そこから基本手当日額の見当をつけてみましょう。
年齢別に決まる基本手当日額の上限と下限
基本手当日額には、年齢ごとに上限額が決められています。どれだけ給料が高くても、この上限を超えて受け取ることはできません。厚生労働省が公表した2025年8月1日改定の上限額は次のとおりです。
| 離職時の年齢 | 基本手当日額の上限額 |
|---|---|
| 29歳以下 | 7,255円 |
| 30〜44歳 | 8,055円 |
| 45〜59歳 | 8,870円 |
| 60〜64歳 | 7,623円 |
下限額は年齢に関係なく一律で、2,411円に設定されています。これらの金額は毎年8月ごろに見直されるため、受給時には最新の数値を確認しましょう。
参考:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります〜令和7年8月1日から〜」(https://www.mhlw.go.jp/content/001520021.pdf)
もらえる日数(所定給付日数)の決まり方
もらえる日数は所定給付日数と呼ばれ、離職理由や年齢、加入期間で決まります。懲戒解雇の扱いによって、この日数の決まり方が変わります。区分ごとの考え方を整理すると次のようになります。
- 重責解雇に当たる場合は、自己都合退職と同じ一般の受給資格者として扱われ、加入期間に応じて90〜150日
- 重責解雇に当たらない場合は、会社都合退職に近い扱いとなり、年齢と加入期間に応じて90〜330日
- どちらの区分でも、加入期間が長いほど日数は増える傾向にある
このように、重責解雇に当たらない方がもらえる日数の上限は大きくなります。自分の区分と加入期間から、おおよその日数を確認しておきましょう。
重責解雇だと総額が少なくなりやすい理由
重責解雇に当たると、受給総額が少なくなりやすい傾向があります。その理由は、もらえる日数の上限が低く抑えられているからです。弁護士の解説では、給付日数の違いが次のように説明されています。
重責解雇の場合には、失業保険の給付日数は、雇用保険の加入期間に応じて90日から150日とされています。他方、重責解雇以外の解雇の場合には、年齢と雇用保険の加入期間に応じて90日から330日とされています。
引用元:ベリーベスト法律事務所「重責解雇とは?懲戒解雇とは違う?失業保険や再就職における注意点」(https://office.vbest.jp/columns/work/g_dismissal/6730/)
日額が同じでも、日数が短ければそのぶん総額は減ります。重責解雇に当たる人は、受給できる総額が抑えられやすい点を理解しておきましょう。
懲戒解雇で失業保険を申請する手続きの流れ
失業保険を受け取るには、決められた手続きを順番に進める必要があります。懲戒解雇であっても、手続きの基本的な流れは他の離職者と同じです。全体像を先に把握しておきましょう。
- 離職票など必要な書類をそろえる
- ハローワークで求職を申し込み、受給手続きをする
- 雇用保険受給説明会に参加し、失業認定を受ける
- 認定日ごとに通い、給付を受け取る
このステップを一つずつクリアしていくことで給付が始まります。それぞれの段階でやるべきことを確認していきましょう。
離職票と必要書類をそろえる
手続きの第一歩は、必要な書類を準備することです。なかでも欠かせないのが、会社から受け取る離職票です。弁護士の解説では、離職票について次のように説明されています。
失業保険を受け取るためには必ず離職票が必要となります。
引用元:企業経営者のための法律相談サイト「懲戒解雇と失業保険」(https://www.datadeta.co.jp/column/懲戒解雇と失業保険|懲戒解雇の条件や懲戒解雇/)
離職票のほかに、本人確認書類やマイナンバーが分かるもの、写真なども必要になります。書類がそろわないと手続きが始められないため、早めに会社へ発行を依頼しましょう。
ハローワークで求職申し込みと受給手続きを行う
書類がそろったら、住所地を管轄するハローワークへ行きます。ここで求職の申し込みと、失業保険の受給手続きを同時に行います。窓口でおおむね次のことを進めます。
- 求職申込書を提出し、求職者として登録する
- 離職票などを提出して受給資格の決定を受ける
- 離職理由についての確認が行われる
この求職申し込みをした日から、7日間の待期期間のカウントが始まります。受給に向けた実質的なスタート地点になるので、早めに手続きしましょう。
受給説明会への参加と失業認定を受ける
受給手続きのあとには、雇用保険受給説明会への参加が求められます。この説明会で、制度の仕組みや今後の流れについて案内を受けます。その後の主な流れは次のとおりです。
- 受給説明会に参加し、受給資格者証などを受け取る
- 指定された最初の失業認定日にハローワークへ行く
- 求職活動の状況を申告し、失業の状態にあることの認定を受ける
失業認定を受けて初めて、その期間分の手当が支給の対象になります。説明会や認定日は必ず参加するようにしましょう。
認定日に通い続けて給付を受け取る
失業保険は、一度の手続きで終わりではありません。給付を受け続けるには、定期的にハローワークへ通う必要があります。弁護士の解説では、その仕組みが次のように説明されています。
就職が決まらない場合は、失業保険の給付日数の限度まで失業認定と受給を繰り返し、日数がなくなるまで続けます。
引用元:企業経営者のための法律相談サイト「懲戒解雇と失業保険」(https://www.datadeta.co.jp/column/懲戒解雇と失業保険|懲戒解雇の条件や懲戒解雇/)
原則として4週間ごとに認定日が設定され、そのたびに求職活動の実績を報告します。所定給付日数に達するか再就職するまで、この認定を繰り返して給付を受け取ります。
懲戒解雇されたとき失業保険以外に受け取れる可能性があるお金
懲戒解雇されたとき、受け取れる可能性があるお金は失業保険だけではありません。働いた分の対価や、条件を満たす各種給付を受け取れる場合があります。主なものを整理すると次のとおりです。
- 未払いの賃金や残業代
- 消化しきれなかった有給休暇の精算
- 退職金や傷病手当金、労災の給付
懲戒解雇されたからといって、これらをすべて諦める必要はありません。自分が受け取れるお金がないか、一つずつ確認してみましょう。
未払い賃金・残業代
懲戒解雇されても、すでに働いた分の賃金や残業代は受け取る権利があります。これらは労働の対価であり、解雇されたことで消えるものではないからです。確認しておきたいポイントは次のとおりです。
- 最後に働いた月の給料が正しく支払われているか
- 残業をした分の割増賃金が支払われているか
- タイムカードや給与明細など、労働時間を示す記録が残っているか
もし未払いがある場合は、会社に支払いを求めることができます。記録を手元に残し、必要なら労働基準監督署などに相談しましょう。
未消化の有給休暇の精算
退職時に使い切れなかった有給休暇が残っている場合があります。懲戒解雇でも、発生済みの有給休暇の権利がなくなるわけではありません。対応の考え方を整理すると次のようになります。
- 残っている有給休暇の日数を確認する
- 会社の制度によっては、残った有給を買い取ってもらえる場合がある
- 買い取りは義務ではないため、まず就業規則や会社の対応を確認する
有給の買い取りが認められるかは会社の制度によります。まずは自分の残日数を確認し、会社に取り扱いを尋ねてみましょう。
退職金・傷病手当金・労災の給付
状況によっては、退職金やその他の給付を受け取れる可能性もあります。懲戒解雇でも、条件を満たせば対象になるものがあります。代表的なものを挙げてみましょう。
- 退職金は、就業規則の規定によって支給される場合がある(不支給や減額の定めがあることもある)
- 在職中の病気やケガで働けない期間があった場合、健康保険の傷病手当金の対象になることがある
- 仕事が原因のケガや病気であれば、労災保険の給付を受けられる場合がある
退職金は会社のルール次第で扱いが変わるため、就業規則の確認が欠かせません。自分が対象になりそうな給付がないか、幅広く確認しておきましょう。
懲戒解雇と失業保険についてよくある質問
ここまでの内容を踏まえ、懲戒解雇と失業保険に関するよくある疑問に答えます。多くの人がつまずきやすいポイントを、Q&A形式で整理しました。特に相談が多いのは次のような点です。
- 離職票の離職理由はどう書かれるのか
- 横領や無断欠勤だと受給できないのか
- 勤続1年未満でももらえるのか
- 解雇に納得できないときはどこに相談すればよいのか
同じような不安を抱える人は少なくありません。自分の状況に近い項目から確認してみてください。
離職票の離職理由はどう書かれるのか
離職票には、離職理由を示すコードが記載されます。懲戒解雇の場合、重責解雇に当たるかどうかで記載される区分が変わります。記載の考え方を整理すると次のようになります。
- 重責解雇に当たる場合は、労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇として記載される
- 重責解雇に当たらない場合は、会社側の理由による解雇として記載され得る
- 最終的な離職理由の判断はハローワークが行う
離職票の理由は、失業保険の扱いを左右する重要な情報です。受け取ったら記載内容を必ず確認し、実態と違う場合は窓口に相談しましょう。
横領や無断欠勤だと受給できないのか
横領や長期の無断欠勤で懲戒解雇された場合でも、失業保険は受給できます。これらは重責解雇に当たりやすい類型ですが、給付そのものがなくなるわけではありません。押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 重責解雇に当たる場合でも、加入期間の条件を満たせば受給できる
- ただし給付制限が3か月つき、受給開始が遅くなる
- もらえる日数も少なくなりやすく、総額は抑えられやすい
つまり受給はできるものの、条件面では不利になるということです。受け取れないと諦めず、まずはハローワークで手続きを進めましょう。
勤続1年未満でももらえるのか
勤続1年未満でも、条件を満たせば失業保険を受け取れる場合があります。必要な加入期間は、重責解雇かどうかで変わるためです。ケースごとに整理すると次のようになります。
- 重責解雇に当たらない場合は、離職前1年間に6か月以上の加入で受給できる可能性がある
- 重責解雇に当たる場合は、離職前2年間に12か月以上の加入が必要
- 前職の加入期間を通算できるケースもある
つまり重責解雇に当たらなければ、勤続半年程度でも受給の可能性があります。自分の加入期間を確認し、条件を満たすかチェックしてみましょう。
解雇に納得できないときの相談先
懲戒解雇や重責解雇の判断に納得できないときは、専門の窓口に相談できます。一人で抱え込まず、適切な相談先を頼ることが解決への近道です。主な相談先は次のとおりです。
- 失業保険の離職理由については、住所地を管轄するハローワーク
- 未払い賃金や不当な解雇については、労働基準監督署や総合労働相談コーナー
- 法的な争いを検討する場合は、労働問題に詳しい弁護士
相談先によって扱える内容が異なります。自分の悩みがどれに近いかを見極め、早めに相談することが大切です。
なお、雇用保険の制度は改正されることがあります。給付制限期間や上限額などは、受給時点でハローワークや厚生労働省の最新情報を必ず確認してください。
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